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収納というと「いかに隠すか」だと考えている人が多いのではないだろうか。
でも悲しいかな、年齢とともに物忘れは増えてくる。「あれはどこかしら?」と探し回る無駄な時間を減らすためには「見えるようにしまう」のが一番だ。
ある住宅での実例では、家事をよくする部屋の、他人の目に触れにくい壁一面に、扉のない高さ2メートルほどの収納棚を設けた。この収納の特徴は扉がないことと、奥行が浅い(30〜45センチ)ことである。この浅さが物を2重、3重に置くことをなくし、中身がひと目で見渡せる使い勝手の良さとなる。
ここの主婦はまだまだ物忘れには程遠い世代だが、仕事を持っていて忙しいため、捜し物に費やす無駄な時間は1分でも使いたくないという立場。
「きちんとした整理や収納は得意な方ではないが、この棚は中の物がひと目で見渡せ、探し物はここへ来れば見つかるという場所になっている。棚に扉を付けなかったのは大成功」と彼女は話す。固定観念にとらわれない柔軟な発想の勝利である。忙しい主婦のための収納だが、見える収納であること、手の届く範囲であることは、お年寄りにも使いやすい収納の条件にぴったりであろう。
実務者会員 吉田紗栄子 (アトリエ・ユニ)
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