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最近は住宅の高断熱、高気密化が進む一方で、化学物質を放出する建材や工法なども多く、シックハウス症候群が問題になっている。十分換気し、清潔に暮らすことが第一の対策だが、日中外出しがちで閉め切ることの多い住宅では限界もある。空気汚染を和らげるには、室内の仕上げ材選びが重要だ。クロス貼りより高価であっても、吸放出性能が高い珪藻土や火山灰を混入した「左官仕上げ」を用いるケースも増えている。
「左官仕上げ」の場合、壁に時計や額などを掛けたり、将来、高齢者向けに手すりを付けたりする場所には下地に配慮しておきたい。薄板を並べた「木ずり下地」や「ラスボード下地」では手すりを付けるときに十分な強度が得られず、補強板が必要になってくる。最近の左官材料のなかにはアク止めをした「合板下地」に薄塗りできるタイプや、改装用でクロスに塗れる珪藻土など簡便なタイプもある。吸放出性能は従来の「左官仕上げ」に劣るものの、こうした薄塗り材料を使ってみるのも良いだろう。吸放出性能が高い素材は室内の汚れも吸着しやすいので、壁などが汚れてきても「生活の味が出てきた」と楽しめるくらいの気持ちの余裕も必要だ。
実務者会員 沼田恭子 (沼田恭子建築設計事務所)
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