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寝室はベッドか、畳の上に布団をか。意見が分かれるところだ。寝心地は個人的なものでどちらが良いと決められないが、高齢になったときにはベッドが楽だ。布団を押し入れに出し入れするのは重労働だし、夜中に小用に立つことが多くなると布団から起きあがる動作はつらい。
最近、設計を手がけた住宅で同じ要望が2度続けて出された。夫婦の寝室のベッドとベッドの間に可動のスクリーンのようなものを設けられないか、というのである。どちらのケースも50代の夫婦の妻からの要望であった。特に仲が悪いわけではなく、むしろお互いの生活スタイルを尊重している表れであった。
蒸し暑い夜には冷房をきかせたい夫と冷房が苦手な妻。夜遅くまでベッドで読書を楽しみたい妻と早く寝たい夫。夫婦といえども好みはそれぞれだ。そんな熟年夫婦もときにはふたりでおしゃべりを楽しみたい。それほど寝室はデリケートである。
おのおのの居場所を確保しながらひとつの空間を共有するには専用の枕灯と、必要に応じて上げ下げできるロールスクリーンが役に立つ。
一生のうち寝ている時間は1/3になる。良い睡眠が取れることは良い住まいの基本条件である。
実務者会員 加藤知徳 (加藤建築事務所)
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