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春の足音が聞こえているのに、朝夕はまだ寒い日がある。そんな日には冷え切った身体を肩までお湯につけて、芯(しん)までじっくりと温まるのが楽しみでもある。浴槽に入ってゆっくりしたいという願望の強い人から「理想の浴槽とはどんな形式のものか?」との相談をよく受ける。そこで肩までお湯に浸かることができて、しかも高齢期を迎えて身体機能が衰えても使いやすい浴槽についてひとつ、アドバイスをしたい。
まず、ふだん浴槽から出るときの姿勢を想像していただきたい。ほとんどの人はかかととつま先で底をキックし、両手で縁をつかみ、立ち上がるきっかけを作る。長い浴槽では、かかとやつま先が際に届かなかったり、縁が広すぎて握れなかったりしてきっかけがつかみにくい。
一般的に使いやすい浴槽は、その内側の長さが100センチ程度、深さが55センチ程度で縁幅は6センチ程度の和洋折衷式浴槽であろう。背もたれの傾斜はついていない方が起きあがりやすいようだ。市販品の浴槽でそういったものがなければ新築時に、ちょっと張り込んでオーダーする手もある。材質はステンレス、ほうろう、ヒノキなど好みに応じて自由に製作可能である。自分に合ったお好みの浴槽を作って心身ともに温まりたいものである。
実務者会員 佐伯博章 (地域総合設計)
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