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キッチンに設けた吊り戸棚のなかで使われない道具が眠っていないだろうか。
一般的に流しやレンジの前の壁はかなり役立つのでそこに調理道具を吊っておいたり、ふきんを掛けたり、調味料や洗剤を置けたりする方が便利だろう。
ところが収納は多めにしてほしいという施主の希望で取り付けた吊り戸棚が活用されていないケースが案外ある。踏み台がないと手の届かない高い位置のものも多く、年を取れば踏台に上るのも危険になるからだ。そんな戸棚にしまっておくものはそもそも日常の暮しでほとんど使われない。そこで提案したいのは思いきって吊り戸棚をなくし、視線の高さに大きな窓を設置することだ。
キッチンでの調理に関連する仕事は途切れなく続ける作業ではない。ときどき視線を外に向けて景色や窓先に植えた樹木などを眺められると義務的に台所で過ごす気分から解放されて良いものだ。ほんの少しの便利さを失う代わりにキッチンで過ごす楽しさと余裕が生まれる。
窓には景色を眺める大きな窓と換気用の開閉しやすい小さな窓を使い分けて設けると、においの出る料理で空気を入れ替えたいと思ったときにも簡単に操作できて快適だ。
実務者会員 沼田恭子 (沼田恭子建築設計事務所)
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